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街には寒さに強い花が植えられる季節
俺は店の前に立ちながら両手で缶コーヒーの暖かさを抱き締め白い息を吐く
「ふーっ」
「あ、お疲れ様。今日も立ってるんだね。」
俺の目線より少し下、彼は小柄な人だ
「店長が店の周りを見て来いって五月蝿いので、仕方ないです。」
「灘さんのお店、地下だもんね。」
「はい・・・」
「ふふっ、寒いのが嫌って言うより外に偵察に行くのが嫌って顔してるよね。」
「えっそっそんな事ないですよ、今日は束陸さんに会えましたし。」
この人に会えなかった日は本当に詰まらない
「ん、僕に会えるのが嬉しいの?そんな事行ってくれるの灘さんだけだなぁ。
んじゃ夕飯食べてこうかなぁミートボールのパスタある?」
「有り難うございます束陸さん、有りますよ。ヘヘ。」
あぁ・・・なんでこの人はこんなにも、ふんわり笑うんだろう・・・
常連さんで女好きであんまり良い噂は聞かなかったりする、でもバンドでドラムやってる時の束陸さんは全然違う雰囲気を醸し出す・・・そう今みたいに、朗らかな感じ。
「む、僕の顔見てニヤ付かないの。灘さんカッコイイから誤解しちゃうよ?」
していいです。
「あはは。さぁ寒いですし、どうぞ。」
「うん」
階段を一緒に降りて行く、俺は早く暖かい季節が来る様に願った。
今年のクリスマスを彼と過ごせるとは思っていなかった。
特に多くを望んだことはない。
幼い頃からクリスマスには良い思い出が無いし大人になっても・・・・思い出は無い。
去年の12月、中頃まで上司と付き合っていた。
背が高く容姿もそれなりだった。
何よりも気が利く人で女子社員からも男性社員からも慕われていて、私には憧れの人だった。
そんな人から「君はゲイじゃないか?」と聞かれたのは3年前の夏。
私は27歳だった。
この人には妻も子供いた、何度か会ったこともあった。
だからだろうか・・・主任との恋は燃え上がった。
何度も抱かれた。
「しゅっ・・・にっ・・・・あっあっ」
見た目よりも逞しい体、愛撫は優しかった。
「もう少し腰をあげて。そう、キスがしたいよ・・・」
声も。
「やっ・・・なめないっでっ////・・・・あっあっぁぁっ」
笑顔も。
「んふぁっ・・・あっやぁやっ・・・」
心も。
「ココが良いんだね。相変わらす可愛いね、こんなにして」
「ひぃあぁっ・・・あっ・・・はぁっ・・・んっぁ/////」
全てが欲しくなった・・・・欲しかった。
でも、結局は不倫だった。
主任は海外支店の支店長を任せられるのを機に、愛する奥さんと子供を連れて私の前から・・・消えた。
そんな不完全燃焼な恋をしたからだろう。
逃げ回ったのは。
彼は入社2年目にしてウチの部署に配属になったエースだった。
出世は確実に出来るであろうコースの入り口にいるのに何故か上司からの見合いを断っていた、変な子だった。
私が彼の仕事上のパートーナーとなり、色々な事を教えた。
飲み込みがとても早く素晴らしい洞察力の持ち主で、大変な商談を纏めるのが上手く色々と助けられた。
彼みたいな人が恋人ならば幸せなのだろうなと思った。
そんな事を考えていた今年の夏、彼から口説かれた。
仕事が終わった後によく行くバーがあってそこで手を握られた。
酔ってはいなかった。
「先輩、俺の事いつもフォローしてくれますよね。俺、凄く助かってるんです。」
「・・・あぁ。」
「俺ね、夢があるんです。聞いてくれます?」
ここで彼は強い酒を煽った。
「好きな人と楽しい家庭を作りたいんです。出来れば子供も欲しい。」
「作れば良いじゃないか。お前なら事欠かないだろう?」
「それがね出来なくなっちゃったんです。」
「ん?何か体に問題でもあるのか?」
「ぷっふふふふっ、先輩は俺の体の心配してくれるんですか?」
「そりゃまぁな、若いんだから大事にした方が良い。」
「あーもうだめだ・・・・・・好きです、先輩。」
グラスを落としそうになったのを覚えている。
あの日はそれで終わったというか私が逃げてしまった。
でも職場で頑張る姿や徹夜している彼の寝顔、それに毎日の様に語られる私と行きたい場所やしたい事リスト・・・私は脆かった。
寒空の下コートとマフラーを巻いて真新しいツリーを抱えて歩く。歩きながらの長い回想に終止符を打ち去年の自分には考えられない程の幸福を噛み締める。
待ち合わせの場所にはもう彼が居た。
有名なケーキ屋の袋を持って寒そうに立っている、その姿だけでも絵になる様に素敵だった。
「幹人さん、マフラーずれてる。」
何気なく伸びてきた手に包まれる様な気持ちになる。
「ありがとう////」
「ディナーは用意出来てますよ、さぁ帰りましょう。僕の家に。」
「あぁ」
軽く下り坂を下って一戸建ての彼の家へと二人で並んで向かう。
何れこの道を一緒に通勤したりするのだろうか・・・これから行く家が自分の家になったりするのだろうか・・・などと考えてしまった///////
今、私の初めてのクリスマスが幕を開けようとしている。
END
憎んでる筈の笑顔に何故か安らぎを感じてしまった…
お疲れ様でした。
誰にでも忘れられない人ってのはいるだろう
僕の場合・・・彼がそうだった
部屋で一人、想う事は君のコト―
僕が入院していた病室の窓辺には何時も花が飾られていた
彼が用意してくれた
それは一輪の赤い薔薇だった
何時も無表情で笑いかけてくれる事は無かった
話した事もない
その機能は彼には無かった
でも、惹かれた
どうしようもないくらいに愛おしくなった
部屋に来る度、声を掛けようか迷っていた
振り向いてくれない事は理解していた積もりだし・・・・叶わないと・・・
そこまで考えて回想を止めた
今は退院して自宅に戻ってきている
また泣きそうになりぼぅっとする頭をゆり動かし現実へと目を向ける
僕が手に入れた・・・僕の手元に残った彼の情報は製造会社の名前と型番だけだ。
ピンポーン
ベルの音がする
“届いた”のだ
新機能が色々と追加された廃棄処分された彼とは違う同じ顔をした彼が・・・
僕はまたキスをするだろう
新しい型番の彼と一生終わらない片思いを何度でもするだろう。
END
微グロ注意かもです。
続くかもしれないし続かないかもしれないし(笑)
夕日が沈み始めて夜が近付く時間
車窓から見える街並みも様変わりしてくる
そんな緋色の中で俺は今、張り込み捜査中だ
隣のシートに座っていた同僚は買い出し中で
一人向かいのマンションのある一室を見ている
「今日も寒いな」
独り言を呟いた・・・つもりだった
「そうですね、早く樫沢さんに会いたいです」
「えぇ!?お前っ白崎?どっから?」
「ここです」
声の元はハンドルの真ん中・・・エアバックが収納されている辺りから聞こえてきた・・・・
「白崎・・・なにしてんの?てかっコレどうなってんの?」
「どうなっているんでしょうね?ユズキちゃんに樫沢さんの声が聞きたいって愚痴ったらこうなっていました」
エヘヘ・・・なぁんてとてもお気楽そうな声が返ってくる
警察の車にこんなコトして良いのか?-
一人で考え込もうとした時
張り込んでいる部屋の主が帰宅してきた
もう秋も終わりだと言うのに細身の身体に半袖半ズボンとは凄い格好だ・・・・
「樫沢さん?どうしました怪訝そうな顔していますけど」
「あぁ・・・張り込みしていたヤツが帰宅してきた」
「おぉ今日は早く終わりそうですね?」
「ん、まぁだと良いんだが」
部屋に明かりが付く
俺は無線で待機している同僚が居る部屋に連絡をいれる
「すまないが、始めてくれ」と一言
その部屋は俺が見張っているマンションの真向かいにあるマンションの一室だ
さっきの男の部屋からは良く見えるであろうその部屋で女性警察官が
シャワーを浴びる為に脱ぎ始める
「樫沢さんて捜査している時凄く素敵ですね」
「え・・・」
顔の下から響いてきた声に思わず動揺する
「コレ、撮られてるの?俺」
「はい」
「白崎は・・・俺のこんな姿見て嬉しいの?」
「はいっ」
元気良く返ってくる声に・・・ニヤケそうになる
「俺も今度ユズキちゃんに頼もうかな、俺も見たい」
「樫沢さん////・・・・その・・・もっと会いたいです、僕」
「俺も」
つい一ヶ月前に告白してOKを貰ってから会えていない恋人に向かって
誤ろうとした時
コンコン・・・コンコン・・・
ん?
窓を叩く音がしたが周囲を確認しても誰も居ないコトに気付く
気の・・・せいではない
異様に視線を感じて振り向こうとして・・・失敗した
「樫沢さんっ」
「白崎っ応援呼んでっ」
俺は運転席に座ってる
だから後部座席が存在する筈で人が立てるスペースはないのに
後ろのヤツは俺のシートにピタリと張り付くように立っている
そして両手で俺の顔を覆い前方のハンドルやら契機が見える場所に押しつけた
一瞬だった
「はぁはぁはぁ」
息遣いが耳に響く・・・最悪だ。
「あっはぁはぁはぁはぁ・・・はぁはぁはぁはぁ」
凄い力だ・・・息ができねぇ・・・
パンッー空を裂く鉛の塊が発射される
音がする
田中が戻ってきたらしい
「はぁひぃはぁはぁはぁはぁはぁはぁ」
「当たったのになんでっ!グフッ!?」
バキッ
後方で田中がヤラレテル
息が苦しい・・・酸素が脳まで行ってないらしい
どうにかハンドルに沈んでた身体を持ち上げる
ナメクジみたいにノロノロしてんだろぅな
振り向いて銃口を構える
撃つ
振り向いた時に見た光景は悲惨だった気がする
細い路地にには真っ二つに割られた車の半分と田中の残骸的な物が飛び散って真っ赤に見えた
俺が撃ったのは特殊弾のうちの一つ腐裂弾、少しイカレチまった肉体にはイカレタ弾を撃てという事らしい
俺は初めて撃ったが・・・一気に腐って破裂する身体・・・二度は見たくないと思った
だがそれよりも、それでも再生しようと胎動するあの蠢き・・・俺の意識はそこで切れたんだけど白崎が駆け付けてくれたのは覚えてる
アイツは・・・いつも、あんなのと戦ってるのか・・・・今回の捜査は覗き魔の逮捕だったのに・・・
「なんだ?自分の身体をガタガタに改造するのが流行ってるのか?」
柔かい笑顔で微笑まれる
泣きそうな顔で言う・・・
蛍光灯の下で見る恋人の姿はなんだか揺れていて・・・その時、俺も泣いてる事に気付いた
END
お疲れ様でした。